世界遺産の城塞(じょうさい)都市、スペイン・クエンカ市に住む芸術家の又木啓子さん(73)が、名誉市民を意味する「養女」に選ばれた。日本を飛び出して半世紀。抽象画や版画で個展を開くかたわら、2006年には市の依頼を受けてデザインして制作した「太陽広場」が完成。これまでの芸術活動を通じた貢献が評価されたかたちだ。日本人には珍しい授与に「やっと仲間になれたかな」。来年1月、「養女」記念メダルが贈呈されるという。又木さんに話を聞いた。
小学生のころは「図画工作と作文だけは成績が良かった」という。友人との交換日記には女子が中南米を旅する漫画を連載。街の概要は図書館で調べ、リポートする姿を描いた。弁当袋は自作した英字のコラージュ柄。テレビを見てファンになった米俳優パティ・デュークには「好きです」と航空郵便を送り、サイン入りブロマイドの返信が来た。「教室でサインに水を垂らしたらにじんで。『本物だ』って大騒ぎしましたよ」。海外に憧れ、絵で描き、自ら動いて未来をたぐっていた。
天才がぽんぽん出たスペインに行きたい
「絵で独り立ちする」。故郷の宮崎を出て、東京の女子美術大洋画科へ。ほかにも合格したが、バイト先が多い立地が決め手という。仕事では、絵画教室で教え、キャラクターのデザインをし、アニメ「アルプスの少女ハイジ」の色つけもした。目的は海外渡航だ。当時、身の回りは米国の文化や情報であふれていたが、指導教員から「まず欧州を見た方が」と助言を受け、欧州を意識した。
「大体、フランスやイタリア…