パリ・メンズファッションウィーク(パリ・メンズコレクション)の2026年春夏コレクションが29日、閉幕した。最終日は日本ブランドのダブレットやタークがショーを開催した。
ダブレット
朝から強烈な日差しが照りつける中、パリ市内の農園でショーを開いたのはダブレットだ。食前に手を合わせて「いただきます」と言う日本のあいさつに宿る感謝の気持ちを服にしたという新作群を披露。農業や水産業に携わる人々と出会う中で、廃棄される漁網や、魚の皮を再利用して作られたフィッシュレザーといった素材を知ったことが着想源になったという。
ダイコンを模したニットやフリルレタスをそのまま大きくしたようなトップス、ジビエのジャケットなど、すべてのルックがユニークで遊び心にあふれていた。
コラボも盛りだくさんだった。目玉焼きの帽子は帽子ブランドのキジマタカユキ、長靴をつま先からはいた靴はシューズブランドのキッズ・ラブ・ゲイトが手がけている。
アイドルグループSnowManのラウールさんもランウェーに登場した。イチゴのつぶつぶ感を再現した生地で作られた全身赤のセットアップが、青空に映えていた。
本当のぜいたくとは何かを考える過程で「いただきます」の言葉が浮かんだという井野将之。ショーを終えて、「三つ星シェフの逸品か自分で育てた野菜か、どちらがおいしいのかわからないけれど、僕らなりのラグジュアリーの価値観がある。漁網をリサイクルする生産者の思いと一緒に作ることができたのは、とてもぜいたくだった」と振り返った。
ターク
タークは、リボン状の生地を巻いたコード刺繡(ししゅう)などこれまで培ってきた得意の技術を掘り下げ、ジャケットやボトムスといった日常着に落とし込んだ。「奇をてらうのではなく、自分の中のベーシックをイメージした」と森川拓野。目新しいテクニックはなかったが、あえてクリエーションの原則を見せることで、ブランドの方向性を強く示していた。
ベッドフォード
1年ぶりのパリ・メンズ参加となったベッドフォードは、プレゼンテーション方式で新作を見せた。グレーのセットアップやプルオーバーにドット柄のシャツブラウスを合わせるなどシックなたたずまいだ。ドット柄は「尊敬するブランドを連想してしまうから」という理由で避けてきたという山岸慎平だが、「世界にとっては新しくないけれど、僕にとっては新しいものを使った服作りをしてみようと思った」と話した。
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カラー
前日の28日には、創業者の阿部潤一から引き継いだ堀内太郎によるカラーがデビューを飾った。
新作群は、襟付きのシャツにスポーティーなボトムスなど、ブランドの根底にあるテーラードスタイルにアウトドア要素が加わった軽やかな印象だ。堀内は「過去のコレクションをトレースした上で、自分のオリジナリティーを加えた。バランスはすごく考えた」。
ショーの前に流したBGMは、今年1月、阿部のラストコレクションのフィナーレで流した曲。テーマのひとつに「時間」を掲げ、色々な時間がまざりあってブランドが変化していくことを表したという。ショーを終えてほっとしたのもつかの間、「頭の中はもう次のコレクションを考えている」と切り替えていた。
ホワイトマウンテニアリング
相澤陽介率いるホワイトマウンテニアリングは「Evolution Theory(進化論)」をテーマに掲げ、ゴアテックスが初めて商品化された1970年代のアウトドアスタイルを現在の先端技術や素材で再現した。
7月7日から10日には25年秋冬シーズンのオートクチュールコレクションが開かれる。
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