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緊急会見した日本ペンクラブの桐野夏生会長=東京都中央区

 日本ペンクラブは15日、参院選における外国人への差別やデマの拡散に対する緊急声明を発出した。東京都内で開かれた会見で、声明発出を呼びかけた中島京子常務理事は「デマによって票が伸びて、国の政策に反映されるのはこわいことだ」と危機感を語った。

 声明では、与野党を問わず、一部の政党が外国人排斥を競い合う状況が生まれていると指摘。関東大震災ではこうしたデマや差別扇動が朝鮮人虐殺等につながった歴史があり、過去の反省に立って共生社会をめざしてきたとし、「少しずつでも成熟し前進してきた民主主義社会が、一部の政治家によるいっときの歓心を買うための『デマ』や『差別的発言』によって、後退し崩壊していくことを、私たちは決して許しません」などと訴えた。

 声明は、現状に危機感をおぼえた中島常務理事の呼びかけで急きょ作られたという。会見で中島常務理事は「表現の自由というのは、デマを拡散する自由ではない」と話した。

 桐野夏生会長は言葉を扱う作家として、人を攻撃するような言葉であふれている社会をどう考えるか問われると、「SNSには客観的な目が入っていない言葉があふれている。私たちが仕事で使っている言葉とSNS上で交わされる言葉は全然違うものと感じている。SNS上の軽い言葉が表に出てきている感じがして、すごく違和感がある。それは違うと言っていきたい」と語った。

 声明は、「民主主義社会を守るために、有権者がいま一度立ち止まり、自身の一票を大切に行使することを願います」とも呼びかける。

 専修大教授の山田健太副会長は、「SNSの世界では、ウソの情報であればあるほど面白いわけだし、関心を引き、ネットの世界でメジャーになっていく。残念ながらウソがホントに転化し、それをホントと思う人が増え、ますますファクトチェックが難しくなる」と指摘。声明が、「SNSのかっこいい言葉や威勢がいい言葉が、本当に自分たちが求める社会につながるのか考えるきっかけになればいい」と話した。

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