唐松岳(左奥の頂)から連なる不帰ノ嶮を望む筆者=2025年4月5日、長野県白馬村、本人提供

野村良太の山あり谷あり大志あり:22

2022年に前人未到の北海道分水嶺(ぶんすいれい)積雪期単独縦断を達成し、28歳で植村直己冒険賞を受賞した道内の山岳ガイド野村良太さんのコラム(紙面は北海道支社版掲載)です。

 富山湾を起点に、日本アルプスを縦断し、静岡県は駿河湾まで。日本海から太平洋に至る山岳地帯415キロを8日以内に駆け抜ける、TJAR(トランス・ジャパン・アルプス・レース)という山岳レースがある。僕がレースの存在を知ったのは大学4年の年明け。東大雪山系のニペソツ山を含む1週間の雪山縦走から下山して、ふもとの幌加温泉で見た特集番組に釘付けとなった。「日本一過酷なレース」と呼ばれるのも納得の、難所の数々と疲弊する選手たち。

 画面越しにも伝わる疲労と、一方でレースに人生を賭けて挑戦する情熱が印象に残った。

 そして思った。自分がやるなら冬がいい。時間を気にするのではなく、それぞれの山を酸いも甘いも味わい尽くす旅がしたい。達成すれば記憶に残る山旅になるに違いない。おそらく誰もやったことがない。

  • 【連載1】「強い山屋になりたい」北大ワンゲル元主将 北海道分水嶺縦走63日
  • 【連載2】日高山脈を前に「食料がネズミに」 北海道縦走中のピンチ救った女性
  • 【連載3】「成長したかは次の挑戦でわかる」北海道縦走達成、次なる未踏の山へ

 あれからかなりの年月が過ぎ…

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