大腸がん患者の全ゲノム(遺伝情報)を解析したところ、日本人の5割に、特定の腸内細菌から分泌される毒素によって起きる変異パターンがあることが、国立がん研究センターなど国際チームの研究で明らかになった。若年の大腸がんの発症要因である可能性があるという。
論文は4月、英科学誌ネイチャーに発表された。
- 「なぜ自分が…」25歳で遺伝性大腸がん 私を動かした、妻の言葉
大腸がんは、日本人のがんでは最も多く、若年の患者も増えている。世界的に見ても日本は突出して多い傾向にあり、原因の解明が求められてきた。
研究チームは、11カ国981人(日本人は28人)の大腸がん患者の検体を集め、全ゲノム解析を実施。がんは、喫煙や食生活など様々な要因によって細胞のゲノムに異常が蓄積して起きることから、その変異パターンを調べ、がん発症の要因を探った。
その結果、大腸菌など一部の腸内細菌から出る「コリバクチン毒素」と呼ばれる分泌物が関与した変異パターンが、日本人は50%に見られ、他の地域と比べて2.6倍以上高かった。コリバクチン毒素は、DNAに傷をつけ、突然変異を起こすことで知られる。
全体で見ると、コリバクチン毒素による変異パターンは、50歳未満の若年の発症者に多く、70歳以上の3.3倍だった。
一方で、コリバクチン毒素による変異パターンがあるかどうかと、原因となる腸内細菌の量は、関連が見られなかった。そのため、早期から細菌にさらされ続けることが、発症に関わっているのではないかと推測できるという。
国立がん研究センター研究所がんゲノミクス研究分野の柴田龍弘・分野長は「今後、日本人の若年者の大腸がんについてさらに解析を進め、国内の患者増加の背景や、ほかの発がん要因を探りたい」としている。
論文はこちら(https://www.nature.com/articles/s41586-025-09025-8)から。