日本学術会議を特殊法人化する法案の国会審議が始まるのを前に、学者らが11日、国会内で集会を開き、廃案を求める声明を採択した。14日から総会を開催する日本学術会議に対しても法案への意思表明を行うよう求めた。
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集会を開いたのは、法案に反対するオンライン署名を呼びかけている学者や弁護士らでつくる16団体。声明では、法人化について「学術会議の独立性を担保すると喧伝(けんでん)されたが、実際は首相の監督のもとに学術会議の自律性を徹底的に縛る」と指摘。「独立性を保障された学術会議のあり方を決定的に後退させる」と批判した。
そのうえで、「学術分野における主要な国家機関の一つを廃止する重大な選択」を伴う法案だとして、問題点を明らかにするための徹底審議を国会に求めた。
学術会議元会長の広渡清吾・東京大名誉教授は、法案について「会員の形式的任命権しか持たなかった首相に、学術会議全体を監督する地位を与える」ものだと批判。「首相に監督される科学者組織が独立した科学的助言を行えるのか。学術会議に対する国際的信頼が崩壊する」と警鐘を鳴らした。
2020年に菅義偉首相(当時)により学術会議会員への任命を拒否された6人の1人である小沢隆一・東京慈恵会医科大名誉教授は、「学術会議では連携会員として、高レベル放射性廃棄物、いわゆる核のゴミの問題にかかわった。政府や産業界におもねるのではなく、人類や地球全体を考える学術的立場から言うべきことを言わねばならない立場だった」と振り返った。
日本教育学会会長の小玉重夫・白梅学園大学長は「学術会議は、軍事研究には非常に慎重な態度で一貫してきたが、今後が懸念される。軍事研究に科学技術が動員されないため、法案を廃案に持ち込むことは大切な課題だ」と述べた。