中国大陸で初となる「YOASOBI」の単独ライブに駆けつけたファン=2025年2月15日、上海、小早川遥平撮影。デザイン・郭溢

 春節(旧正月)の大型連休があった1~2月、昨年の2倍近い170万人が中国から日本を訪れた。

 中国のSNSには、日本での思い出を収めた多くの写真がコメントとともに投稿されているが、時々こんな注意書きを加えたものがある。

 (愛国版)

 ある若者は和服の着付け体験の写真に、「姉妹で縁日に行ったよ(愛国版)」とつけていた。また別の若者は富士山を背景にした写真やローストビーフ丼などの映える写真を「東京の記録(愛国版)」としていた。

【連載】新語・流行語から探る中国

受験や結婚といった人生の転機や、経済やライフスタイルの変化を、中国の人びとはワンフレーズの漢字で巧みに表現しています。そんな新語・流行語が映し出す、中国社会のいまを読み解きます。

 中国のSNSでは、自分の状態を示すときに「(emo版)」(エモい・感傷的)などのように「版」の文字が使われることがある。「愛国版」は日本語で言えば「愛国モード」に近いニュアンスかもしれない。

「YOASOBIのライブに・・・」

 でも、こうした写真を公開する若者はなぜ自分が「愛国版」になっているのか、多くを語っていない。丸かっこにくくられた「愛国」という言葉は唐突で、どこか浮いている。

 日中間には、常に歴史問題が横たわる。政府が旧日本軍の侵略の歴史を強調する中国で、「日本のものが好き」という意思表明をするときは、ある種の緊張感が漂うことがある。

 中国版Xの微博(ウェイボー)では、こんな投稿を見つけた。「私は愛国的だけど、YOASOBIのライブに行きたい」

 日本を代表する2人組音楽ユニット、YOASOBIは中国の動画投稿サイトbilibili(ビリビリ)で146万人のファンが付く。2月中旬に上海であった中国大陸初の単独ライブは、数秒でチケットが売り切れた。

音楽ユニット「YOASOBI」の上海公演。中国の大勢のファンが詰めかけた=2025年2月16日、ジェリー・フー氏撮影

 若者たちは、どんな思いを持っているのか。会場を訪れた。

記事後半では、日本のあるアイドルグループの映像をめぐって起きた騒動についても紹介し、中国の若者の思いを探ります。

 「チケットを取れなかった友…

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