Smiley face
写真・図版
国土交通省関東運輸局の藤田礼子局長(右)から行政処分の通知を受け取る日本郵便の千田哲也社長=2025年6月25日午後2時1分、横浜市、上野創撮影

 運転手への不適切な点呼の横行が発覚した日本郵便に対し、国土交通省関東運輸局(横浜市)は25日、貨物自動車運送事業法に基づき、一般貨物自動車運送事業の許可を取り消す処分を出した。同社は5年間は許可を再取得できず、集配の拠点間の輸送などを担う約2500台のトラックやバンが使えなくなる。

  • 不適切点呼、3年前に内部通報 「違反ない」対策取らず 日本郵便

 総務省も同日、日本郵便株式会社法に基づく処分で最も重い「監督上の命令」を出した。

 国交省では関東運輸局の藤田礼子局長が25日、日本郵便の千田哲也社長に行政処分の通知を手渡した。千田社長は「多くの皆さまに多大なるご心配、ご不安をおかけしたことをおわびします。再発防止策に、経営陣が先頭に立って取り組んでいきたい」と話した。

運行管理者211人の資格取り消し

 国交省によると、関東運輸局管内では、点呼記録簿の「不実記載」などの違反が26郵便局であった。違反点数は計197で、許可取り消し基準となる81を大幅に超えた。不実記載は全国では73局で確認され、国交省は点呼の責任者である同社の運行管理者211人の資格を取り消した。

 日本郵便は軽バンなど約3万2千台も保有するが、軽貨物は届け出制で、今回の処分の対象外だ。軽バンの点呼についても国交省は立ち入り監査を続けており、結果がまとまり次第、「車両使用停止」の処分が同社に科されるとみられる。

 国交省は25日、監査による処分に先立ち、現在も走行している軽バンなどの安全対策の徹底を求め、軽貨物事業に関し貨物自動車運送事業法に基づく安全確保命令も出した。7月中に改善策を出すことを求め、定期的に実施状況を報告させる。

 日本郵便は、一般貨物約2500台のうち約24%分の輸送を子会社に委託したうえで、そのうち9割以上を郵政グループ外に再委託する。このほか約34%分をヤマト運輸や佐川急便、西濃運輸など同業他社に委託する方向で調整している。残りの42%は自社の軽貨物で代用する方針だ。

子会社にも報告求める

 日本郵便が、引き続き一般貨物を扱う子会社に委託することで、事実上の「処分逃れ」とならないよう、国交省は子会社の「日本郵便輸送」に対しても、点呼を適切に行うなどの防止策を講じて定期的に実施状況を報告するよう求めた。

 郵政事業を監督する総務省が日本郵便に出した「監督上の命令」の処分は、日本郵便株式会社法に基づく。2019年のかんぽ生命の不正販売の際に続き、2度目となる。郵便・物流事業に影響がないよう、ユニバーサルサービスの確実な提供を求め、サービスの状況などを当面の間、報告させる。

 日本郵便は処分を受け、「今回の行政処分等を厳粛に受け止め、運送事業者として、確実な点呼の実施をはじめ、運行の安全及び運転者・お客さまの安全を確保する体制構築を徹底し、信頼回復に全力で取り組んでまいります」とするコメントを出した。

共有