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酵母の発酵実験に取り組んでいる渡辺大輔准教授=2024年7月11日、奈良県生駒市高山町、伊藤誠撮影

 奈良先端科学技術大学院大学(奈良県生駒市)が今月、「清酒製造免許」を取得した。バイオサイエンス領域微生物インタラクション研究室が進める、新しい味わいと香りの日本酒の開発を加速させるねらいがある。

 この免許は、日本酒の研究目的に限られ、年間40リットルまでしか製造できない。それでも、同研究室の渡辺大輔准教授(47)は、「日本酒のもろみの中にある酵母遺伝子の働きなど、これまでできなかった研究が可能になった」と喜ぶ。税務署に免許を申請する書類の作成に半年ほどかかった。

 仕込みの段階から製造方法を模索することで、日本酒の品質に関わる先進的研究や製品化のスピードが速まるのが大きなメリット。すでに、県外の複数の酒蔵から共同研究のオファーがあった。

 とくに、昔からある酒蔵や中小企業では研究設備をもたないケースもあることから、奈良先端大の設備やノウハウと組み合わせる産学連携の活性化も図れるという。

 今のところ、酵母遺伝子のすべてが解明できているわけではない。このため、今後の研究によって、味わいや香りを左右する成分を生み出す酵母遺伝子の発見などに期待がかかる。

 これまで、バナナの香り(酢酸イソアミル)、リンゴの香り(カプロン酸エチル)の酵母は知られている。渡辺准教授は、「私が好きな桃の香りや、森の香りなどの日本酒が造れたら」と、今から研究の成果を楽しみにしている。(伊藤誠)

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