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小西酒造社長の小西新右衛門さん=兵庫県伊丹市、滝沢美穂子撮影
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 日本の「伝統的酒造り」が昨年12月、ユネスコの無形文化遺産に登録された。旗振り役を務めた小西新右衛門さん(72)は、「清酒発祥の地」といわれる兵庫県伊丹市で、400年以上酒造りを続ける小西酒造の社長だ。登録の経緯や意義、日本酒のめざす将来像について聞いた。

きっかけは「和食」の遺産登録

 ――登録から2カ月たちました。

 伝統的酒造りとは、杜氏(とうじ)や蔵人ら酒造りに関わる職人が築き上げてきた、こうじ菌を使った酒造りの技術のことです。酒造りには、日本酒だけでなく、焼酎や泡盛、みりんも含まれます。うれしかったのは、全国各地の蔵元が取材を受け、それぞれ話題になったこと。これこそが一番のメリットです。

 ――登録へ向けた活動は、どのように始まったのですか。

 きっかけは2013年に無形文化遺産に登録された「和食」です。特徴の一つに「年中行事との関わり」があり、そこに日本酒も含まれるのですが、なかなか浸透せず、その間に和食は世界から受け入れられるようになりました。そのため、「お酒を別に申請したらどうか」という議論が業界内で起こりました。政府も、農産物や農産加工品の輸出を進める方針を掲げており、無形文化遺産への取り組みを後押ししてくれました。

 私は日本酒造組合中央会(東京)の副会長です。中央会のメンバーは、日本酒・本格焼酎・泡盛・本みりんの製造元。登録に向けて相当な議論をする中で、この四つとも「こうじ菌」を使っている点にたどり着いたのです。

 個人が技をしっかり守っていることを主張する必要があり、「日本の伝統的なこうじ菌を使った酒造り技術の保存会」という組織を立ち上げました。私は「和食」の時から関心があったので、会長に推挙されました。杜氏や蔵元に個人の立場で参加してもらいました。会員は800人以上になります。

 ――順調だったのですか。

 いえ。「蔵元にとって何のメリットがあるのか?」「商品が売れるのか?」といった声もだいぶありました。しかし、無形文化遺産は、各企業の商売のために登録するわけではありません。技が伝承されていることにお墨付きを頂いたわけです。こうした点が世界に認知され、「和食」のように世界に打って出たいと蔵元の方たちが思えるスタート地点に立てたと思っています。

記事の後半では、小西さんが思い描く日本酒の将来像や、自身が進める新たな取り組みについて語ります。

■技だけでなく「文化」にも着…

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