青森県中泊町・宮越家の一般公開が23日から始まった。大正期のステンドグラスの傑作や、狩野派のふすま絵などがある離れ「詩夢庵」のほか、庭園の美を見学者は堪能した。今回は、特別企画として宮越家のふすま絵と対をなす、大英博物館所蔵のふすま絵の高精細複製品が並んで展示された。津軽半島とロンドンを結ぶ縁と、150年ぶりの「きょうだい」の再会に「とても良かった」の声が相次いだ。
午前10時、宮越家近くの停留所に最初の見学者15人が乗ったシャトルバスが到着した。出迎え式で浜舘豊光町長は「大英博物館のふすま絵と宮越家のものがどのように並んでいたか確認してください。ステンドグラスも小川三知が50代の時に制作した最高傑作です。何度でも足を運んでいただきたい」とあいさつした。宮越家当主の寛さん(66)は「心を込めて歓迎します。宮越ワールドを堪能していただければ」と迎えた。
一行は、まず「詩夢庵」に入り、12畳の「涼み座敷」のガラス障子にアジサイ、ハクモクレン、ケヤキが組み込まれたステンドグラスを、ボランティアガイドの説明にうなずきながら鑑賞した。小川三知の制作で、大正期から約100年、これまで一度も修復せず、オリジナルのままの最高傑作に、青森市からきた葛西承子さん(77)は「最初の一般公開から欠かさず参加していますが、三知さんの作品には、いつ来ても感激します」と話した。
続いて、今回の目玉企画、ふすま絵が並んだ15畳の「奥の間」へ。西側の宮越家「春景花鳥図」と直角に、大英博物館の高精細複製品「秋冬花鳥図」のうちの「冬」の一枚が南側に据えられ、残る3枚が北側に並んでいる。見学者は、ふすま絵に包まれて、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての美の世界に浸った。京都からきたという女性は「ステンドグラスが見たいと思って申し込んだのですが、ネットでふすま絵もあることがわかりました。博物館や美術館だと、ガラスケース越しに見るのですが、ここではこんなに近くで見ることができました。すごく素晴らしいものでした」と興奮気味だった。
春の一般公開は6月29日までだが、これまでに2985人が申し込み、予約はすでに埋まっている状態。半数以上が県外からの申し込みという。今後はキャンセル待ちで対応できるか検討している。応募が増えたことについて、町関係者は「宮越家と大英博物館の高精細複製品によるふすま絵のダブル展示が広く関心を集めているのではないか」と話している。問い合わせは、町文化観光交流協会(電話0173・57・9030)へ。