新旧2人の米大統領がそろって反対に回る逆風を乗り越え、日本製鉄が米同業USスチールの買収にこぎ着けた。日鉄トップの橋本英二会長は1年半に及んだ米政権との交渉を振り返り、「政府が経済への関与を強めるのは世界共通の流れ」と話す。地政学的分断が深まる時代に、日本企業はいかに勝ち抜くのか。

インタビューに応じる日本製鉄の橋本英二会長=2025年7月8日午後3時37分、東京都千代田区、恵原弘太郎撮影
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 ――経営難から身売りに乗り出した、粗鋼生産量で世界29位のUSスチールを、世界4位の日鉄が買収しました。かつて世界一を競った両社の統合について、当初「阻止する」と明言したトランプ米大統領ですが、最終的には認めました。

 「トランプ氏には『米国の製造業を復活させる』という明確な目標がありました。これに応えようと、USスチールの設備への投資を約束しました。輸入品に高関税をかけるだけでは再生できないとも訴え、トランプ氏は、最後にはそれに納得して翻意し、買収を認めたのだと思います」

 「トランプ政権の一連の対応は個別特殊なものではなく、世界共通の新たな流れを背景にしたものです。政府が、産業政策を通じて経済・ビジネスへの関与を強める流れです」

 ――といいますと。

 「米中対立などの地政学リスクに対応しつつ、経済成長と地球温暖化防止を両立しなければならない。この二つの大きな課題への対応は、企業だけでも政府だけでもできない。官民が連携するしかないんです。中国は国有企業を優先する度合いを強め、日本も半導体産業を政府主導で再建しようとしています」

鉄鋼産業に目立つ政府介入、その「二つの理由」

 ――経済を、民間と市場に任せる傾向が強かった米国の転換は、特に際立ってみえます。

 「冷戦期に対ソ連の観点から…

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