会見する日本銀行の植田和男総裁=2024年3月19日午後3時43分、東京都中央区、小玉重隆撮影

 日本銀行は29日、保有する国債を時価でみた評価損が9兆4337億円となり、3月末時点として過去最大になったと発表した。日銀が大規模な金融緩和策を変更して金利が上昇し、国債の市場価格が下がったためだ。日銀は会計上、時価評価を採用しておらず、政策運営には支障はないとしている。ただ、さらに長期金利が上昇すれば、評価損は膨らむため、日銀の財務の健全性が問われる可能性もある。

 日銀が公表した2023年度決算によると、国債残高は前年比1.4%増の589兆6634億円で、2年連続で過去最大になった。これは3月末時点の簿価(取得時の価格)で、時価で換算すると、580兆2297億円となり、差し引きが評価損となった。評価損は前年の1571億円から大きく膨らんだ。

 国債の時価評価が下がったのは、日銀が低く抑えてきた長期金利(10年物国債の利回り)の上限を引き上げたことがある。昨年7月と10月の金融政策決定会合で上限を引き上げ、今年3月には大規模緩和を転換。マイナス金利を解除するとともに、長期金利を低く抑える枠組みを撤廃した。こうした動きを反映し、昨年3月末時点で0.3%台だった長期金利は今年3月末時点では0.7%台に上昇した。長期金利が上昇した分、国債の市場価格が下落した。足元ではさらに上昇して1%台で推移しており、含み損は膨らんでいるとみられる。

 日銀は、国債を満期まで持ち…

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