会見し、ジャニー喜多川氏による性加害を認めた旧ジャニーズ事務所の(右から)藤島ジュリー景子氏、東山紀之氏、井ノ原快彦氏=2023年9月7日、東京都千代田区

 旧ジャニーズ事務所(現SMILE―UP.(スマイルアップ))が創業者の故ジャニー喜多川氏による性加害を認め、7日で1年となった。これまでに約1千人が被害を申告する事態となっているが、時期や状況といった全容は明らかになっていない。当事者からは「全容を解明したうえで、再発防止策を考えるべきでは」という声が上がる。

 スマイル社によると、8月30日までに996人が被害を申告し、補償について497人と合意した。弁護士らでつくる被害者救済委員会が被害者から事実関係を聞き取っているが、いつから喜多川氏による性加害が始まったのか▽どのような手口で性加害に及んだのか▽背景にはどのような問題があったか、といったことについて明らかにしていない。

 また、事務所の元スタッフ2人による性加害も明らかになっているが、スマイル社は2人はすでに事務所に所属せず、うち1人は「関係法令や就業規則に従って厳正に対処した」と説明することにとどまっている。

 被害当事者からは、再発防止を図る観点からも事実関係を明らかにしたうえで、捜査への協力を求める声が上がる。ただ、事務所は被害者からの刑事告訴や捜査機関からの照会がない限りは情報提供をしない意向を示している。

「被害の確認は困難」

 問題をめぐっては、昨年3月に英公共放送BBCが問題を報じたことをきっかけに、実名や顔を出して被害を告白する人が相次いだ。

 事務所は、外部有識者でつくる再発防止特別チームを設置。チームの目的は「ガバナンス上の問題に関する再発防止策を提言して実行を求める」とした。一方で、埋もれた被害を掘り起こすことはしない意向を示していた。

「法を超えた救済」

 被害を訴える元ジャニーズJr.や事務所関係者ら計41人から聞き取りを実施。喜多川氏が「長期間にわたって広範に性加害を繰り返していた事実が認められた」と結論づけた。

 事務所側はこの調査報告書を受け、昨年9月に初めて開いた記者会見で性加害があったと認め、「法を超えた救済」をしていくとの方針を示した。

 被害当事者や市民らは、元スタッフの性加害を含め、事務所が被害の全容を明らかにするように署名を集めたり、要望書を提出したりしている。

 スマイル社は朝日新聞の取材に対し、被害の申告者や補償に合意した人の数をホームページで公表しているとし、「性加害の総数は明らかになってきている」と説明。被害の全容解明をするかどうか尋ねると、「再発防止特別チームの調査により性加害の態様や被害状況、原因・背景などが解明されている」と回答し、自ら調査したり、人数以外の情報を公開したりするつもりはない意向を示した。(島崎周)

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