選択的夫婦別姓をめぐる議論の中で、「旧姓の通称使用の法制化」というアイデアがしばしば対案として出てきます。「夫婦別姓も選べるようにして欲しい」というシンプルな訴えに、通称の法制化という対案はどのような影響をもたらしてきたのでしょうか。選択的夫婦別姓訴訟の弁護団長を務めていた榊原富士子さんに聞きました。
何度も出てきた「通称使用の法制化」
選択的夫婦別姓の機運が高まるたびに必ず顔を出すのが、通称の法制化です。これまで何度も選択的夫婦別姓に反対する自民党議員が主張し、今回は日本維新の会が法案を提出しています。旧姓を使いやすくするものではありますが、「別姓阻止のツール」としてはたらいているのです。
初めて意識したのは1996年です。この年の2月に法務相の諮問機関である法制審議会が、夫婦別姓も同姓も選べる法改正案を答申しました。反対する政治家や活動家の運動が激しくなる中、11月に公表された総理府の世論調査で、夫婦別姓の賛否を問う項目に突然、「通称として使えるよう法律を改める」という選択肢が入りました。当時の新聞には、政治介入があったと書かれています。
判決に透ける「通称使用でいいじゃない」
選択的夫婦別姓と通称使用の…