細かく刻まれた肉はツヤのあるピンク色で、かむたびに深みのあるうまみが染み出てくる。のみ込んでしまうのがもったいない。
「山古志の闘牛ブレザオラのタルタル」。新潟市中央区のイタリア料理店で食べた料理の名前だ。
1トンを超えるような雄牛が低く太い「ゴツン」という音を立て、頭からぶつかり合う新潟県の旧山古志村(現長岡市山古志地区)の「牛の角突き」。締まった胴、筋肉が盛り上がったもも。アスリート体形の牛が、こんなにおいしい料理になるなんて。衝撃だった。
通常、肉牛は去勢され2、3歳で食用になる。一方、闘牛は去勢せず、長ければ15歳過ぎまで活躍する。筋肉質で硬くなり、脂身は少ない。骨も太く、食べられる部分が狭くなる。だから、けがをしたり闘争心を失ったりして引退した後は、細切れにしてひき肉の一部にしたり、飼料用に使われたりしてきた。
「アスリート体形」生まれ変わらせた熟成技術
それを、逸品に生まれ変わら…