旧石器時代に似せて造った小屋から出る関野吉晴。雪の被害がほとんどないことを確認した=新潟県村上市山熊田

現場へ! 旧石器時代の旅(3)

 約80年前の岩宿遺跡(群馬県みどり市)の発見以来、日本での存在も確認された旧石器時代へ、2年余り前からタイムスリップの旅を続ける探検家の関野吉晴(76)。北海道から沖縄まで4カ所を拠点に当時に近い形の暮らしを始めたが、それは試行錯誤の連続だ。

 現代人なら当たり前に買える食べ物や鉄など金属製の材料や道具は封印。利用できるのは、自然の中にあるものだけなのだ。

 今月3日、関野は新潟県村上市山熊田集落のはずれに造った旧石器時代様式の小屋を半年ぶりに見にいった。完成後、初めて迎えた今冬は積雪が2~3メートルに及ぶほどの大雪に見舞われた。

 建てたのは昨年春。竹の幹やアシ、ススキ、スギの皮などを立てかけたりツルのヒモで交差に組んだりした。床は1~2人が寝られる1辺約1~2メートルの縦長、屋根は円錐(えんすい)に近い形だ。

 南米アマゾンの奥地で暮らす先住民と一緒に野宿の旅をした時は、密林から枝葉を集めてきて数人でものの30分でできたという。しかし、日本では関野がひとりで材料を周辺から集めてきて、建てるのに延べ1カ月かかった。「その中で生活するのが旅の本番なのに、準備段階でこんなに時間がかかった」と苦笑いする。

 「あ、無事だ」。雪どけがようやく進み、長靴で近づくと、雪の重みに小屋は耐えていた。傾斜がきつい屋根にあまり積もらずに済んだらしい。小屋の中に竹を並べたベッドも乾いていて、雪や雨の水が漏れることもなかった。地面が見えるところではフキノトウも芽を出している。「あと少したてば山菜や野草摘みで暮らしていけそうだ」

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