世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の信者の親を持つ「宗教2世」8人が24日、教団の教義に基づく親の教育によって精神的被害を被ったなどとして、教団を相手取り、計約3億2千万円の損害賠償を求めて24日、東京地裁に提訴した。
全国統一教会被害対策弁護団によると、高額献金などの財産的被害ではなく、2世が精神的な被害を訴えた訴訟は初めてだという。
原告は20~40代の男女8人。訴状によると、原告らは、教団や親から、教義に基づき、「○○しないと地獄に落ちる」などと恐怖心を刷り込まされたり、自由な意思決定や結婚・交友の自由を侵されたりするなどの虐待を受けてきたと主張する。
こうした行為で健全な人格形成や発達を妨げられ、人間関係を作りづらくなったり精神的障害を負ったりするなどの被害を受けたと訴える。
また、親の虐待は教団の指示や教えに基づく行為で、教団も責任を負うと主張。2世の人権より教義実践を優先するように教団が親に指示し、「2世の発達環境を著しくゆがめた」などと訴える。
24日に記者会見した原告の20代男性は、両親が財産を教団への献金につぎこんだため、節約として風呂は週に1、2回しか入らせてもらえなかったという。文具なども買えず、高校卒業後は経済的理由で進学できなかった。
就職後はうつ病と診断され、休職や失職を繰り返してきた。今は障害年金を受給し生活している。男性は、信者ばかりと関わってきたことで、社会に適合することが難しかったとする。「子どもの頃から特定の考え方を強いられ、生活をさせられることは大人になった後もずっと影響が残る。教団の教えで、自分の人生を自由に選べなかったことや、将来をあきらめざるを得なかったことの違法性を問いたい」と話した。
弁護団長の村越進弁護士は、旧統一教会による被害については、これまで経済的被害に焦点があてられてきたと話す。その上で、3月の東京地裁に続いて東京高裁も解散命令を出し、教団の清算が始まった場合も「2世の精神的被害も一つのテーマであるということを明確に提起するという意味がある」とし、今回の提訴の意義を説明した。
今回の原告の一部は、精神的な被害を訴え、元信者らによる教団との集団交渉に昨年6月に加わっていた。
教団は「訴状が届き次第、内容を精査して対応を検討いたします」とのコメントを出した。