(8日、第107回全国高校野球選手権大会1回戦 花巻東4―1智弁和歌山)

 1点を先行された一回裏。花巻東の2番打者、佐藤謙成選手(3年)の視線の先には、中前安打で出塁した高間木颯我選手(3年)の姿があった。

 「とにかくチャンスを広げるんだ」。佐藤選手は自らに言い聞かせた。

 初球が投じられた瞬間、バントの構えから素早くヒッティングに転じる。地表を鋭く走った打球はセンター前に抜け、逆転の足がかりとなる無死一、二塁の得点機を作り出した。高間木選手は2球目、佐藤選手は初球でいずれも直球。追い込まれる前に、早いカウントから直球を狙う作戦だった。

 「(送りバントを警戒した)三塁手が前進しているのが見え、『間違いない』と、打ちました」

 この朝、甲子園に向かうバスの中で、高間木選手と「オレたちで無死一、二塁を作ろう」と誓い合っていた。練習も含め、試合前はいつも同じ誓いを立ててきたが、地方大会でも初回の連打は1度だけ。それを憧れの舞台で実現出来た。

 「すごくうれしかったです」と、佐藤選手に笑みがこぼれた。

 選抜大会では9番打者。「自分がチャンスを作る」をテーマに練習をくり返し、確かな出塁力を身につけたことで、不動の2番になった。佐々木洋監督は「春から最も伸びた選手のひとり」と評価する。

 智弁和歌山の投手陣は「やっぱり球威がすごかった」と佐藤選手。「負けずに振り切れたのは良かったけど、変化球へのアプローチに課題が残りました。次までに改善します」と、さらなる進化を誓っていた。

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