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映画「港に灯がともる」から ©Minato Studio 2025 
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 1995年1月の阪神・淡路大震災で、被災者の心の傷に寄り添った精神科医がいた。30年後、弟が一本の映画を製作した。兄が残した言葉の意味を知り、多くの人に伝えたいと思った。今月17日から全国70以上の映画館で順次上映される。

 安成洋(あんせいよう)さん(60)は大阪市で行政書士を務める。2023年、映画製作会社「ミナトスタジオ」を神戸で設立した。常勤社員や常設事務所はない。スタジオもない。そんな会社が初めて製作した映画が「港に灯(ひ)がともる」。復興住宅に暮らす家族の心模様を描く。

 きっかけは、22年春。知り合いの安達もじりさん(48)に声をかけたことから始まる。「次は映画をやりませんか」

 当時、安達さんはNHK大阪放送局のディレクター。朝の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」の演出を担当し、撮影が終わった頃だった。

 2人の出会いは18年冬にさかのぼる。NHK側から「お話を聞かせてほしい」と安さんに連絡があった。プロデューサーと共に大阪のホテルで初めて会ったのが安達さんだった。安さんの兄をモデルにドラマを作りたいという。

 兄の安克昌(かつまさ)さんは震災当時、神戸大医学部付属病院の精神科医として、避難所などで被災者のカウンセリングや診療などに取り組み、96年に「心の傷を癒(いや)すということ」(作品社)を出版した。

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 被災者に寄り添い、心のケア…

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