Smiley face
写真・図版
福井商との3回戦の六回裏1死、早稲田実の斎藤は中越えに本塁打を放つ=2006年8月16日、阪神甲子園球場

 早稲田実(西東京)のエースとして2006年夏の甲子園で優勝し、「ハンカチ王子」の愛称で国民的人気となった斎藤佑樹(のちプロ野球日本ハム)は打撃も非凡だった。

 同年夏の西東京大会は6試合で打率2割9分4厘、4打点をマーク。甲子園では同年春、関西(岡山)との選抜大会2回戦に続き、夏も福井商との3回戦でも打球をスタンドに届かせ、計2本塁打と強打を見せた。

 福井商戦の一発は六回1死、走者なしからだった。福井商の右腕・池本大輔の高め直球をバックスクリーン左へ運んだ。本人は「二塁打かな」と思って懸命に走ったが、アルプススタンドがどよめき、本塁打と気付いたという。

 風にも助けられたが、打球を120メートル以上飛ばせるのはミートのうまさ、スイングの強さがあってこそ。パワーとセンスを証明した一撃だった。

 この試合、斎藤は投球では調子があがらず、五回には先に1点を取られた。打線もリズムが悪く、五回までゼロ行進だった。和泉実監督が思わず「オレらは逆転の早実だから」とベンチでハッパをかけた。

 ようやく六回、主将の後藤貴司の適時三塁打と、船橋悠の2ランで逆転した。斎藤の本塁打はその直後だった。最終的には7―1で福井商に勝ち、エース荒木大輔(のちプロ野球ヤクルトなど)を擁した1982年以来、24年ぶりの夏の甲子園ベスト8を決めた。

 この後、斎藤もチームもさらに勢いは加速した。80年以来、26年ぶりに進んだ決勝では大会3連覇を狙った駒大苫小牧(南北海道)との延長十五回引き分け再試合を制し、悲願の初優勝へ駆け上がった。

 斎藤は高校卒業後、早大の選手としてプレーした東京六大学リーグでも本塁打を放っている。4年生だった10年5月15日の法大戦で、加賀美希昇(のちプロ野球DeNA)の直球をライナーで神宮球場の左翼席に運んだ。

 スタンドには1万9千人の観客が詰めかけていた。当時の取材に「いつも狙っているんですけど、やっと打てました。高校時代から人の多いところで熱くなる性格なので」と話した。

共有