明智光秀の居城・坂本城跡(大津市)が、国の史跡に指定されることになった。国の文化審議会が20日、文部科学相に答申した。「(織田信長と豊臣秀吉の)織豊(しょくほう)期城郭の実態を知るうえで重要な城跡」と評価された。
坂本城は、1571年に比叡山を焼き打ちした信長が周辺の支配拠点として光秀に築城させた。本丸、二の丸、三の丸があったとされる。ただ、城の痕跡が地上になかったことから「幻の城」と呼ばれてきた。
市によると、国史跡になるのは、1979年度に発掘調査をして礎石建物跡などを確認した本丸地点の約8800平方メートルと、2023年度に石垣や堀を確認した三の丸地点の約3千平方メートル。
文化審議会は「琵琶湖を通じた京への流通拠点に築城された政治的、軍事的、経済的に重要な城跡」とし、「本丸の礎石建物跡や三の丸の石垣が良好に残っており、織豊系城郭の立地や構造、築城技術などを知ることができる」と評価した。
市では、23年度の発掘調査で三の丸の遺構が確認されてから、史跡指定への期待が高まっていた。調査場所を含む約3千平方メートルで宅地造成を予定していた不動産会社「三王不動産流通」(大津市)は市からの要請を受けて開発を中止し、史跡指定に向けた覚書を24年3月に市と結んだ。
市は追加調査や文化庁との協議を重ねた。今年2月には、県を通じて文科相に史跡指定の意見具申をした。
佐藤健司市長は20日に会見し、「貴重な文化財を私たちの世代の責任において、しっかりと後世に残す礎ができ、ほっとしている」と語った。
市文化財保護課の岡田有矢さんは「一つのゴールを達成できたので率直にうれしいのですが、どう見せていくかという次のことを考えていかなければ」と話した。
市は今後、専門家の検討を踏まえて活用法を考える。市歴史博物館では21日から8月31日まで記念のパネル展を開く。
市によると、市内での国指定史跡は16件目。城郭としては初めてという。
県内ではこのほか、特別史跡の安土城跡(近江八幡市)で昭和中期まで舟入りとして活用されていた部分、史跡の近江大津宮錦織(にしこおり)遺跡(大津市)で推定宮跡南東部の南辺回廊部にあたる地点が、それぞれ追加指定される見通しとなった。