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連載「100年をたどる旅」憲法編

連載「100年をたどる旅~未来のための近現代史」憲法編③

 大日本帝国憲法発布に先立つこと8年、神奈川県五日市町(現東京都あきる野市)の教員だった29歳の千葉卓三郎が「日本帝国憲法」を起草した。全204条からなり、出色はこの条文。

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唯一確認されている千葉卓三郎(右端)の写真=新井勝紘さん提供

 《日本国民ハ各自ノ権利ヲ達ス可(べ)シ 他ヨリ妨害ス可(べか)ラス 且(かつ)国法之ヲ保護ス可シ》

 現行の日本国憲法11条「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない」と響き合う。

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東京経済大の色川大吉氏とそのゼミ生が旧家の土蔵から「五日市憲法草案」を発見した=1968年8月撮影、新井勝紘さん提供

 立憲民主主義は欧米からの「輸入品」ではない。日本の土着の歴史の中にあった――。そう説いたのは歴史家の色川大吉だ。1968年、旧家の土蔵からこの「日本帝国憲法」を発見、後に「五日市憲法草案」と名付けた。

 一躍脚光を浴びたのは2013年のこと。美智子皇后(当時)が、この1年の印象に残った出来事を問われ「『五日市憲法草案』のことをしきりに思い出しておりました」と文書で回答した。「長い鎖国を経た19世紀末の日本で、市井の人々の間に既に育っていた民権意識を記録するものとして、世界でも珍しい文化遺産ではないかと思います」

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五日市郷土館で五日市憲法草案を見る天皇、皇后両陛下(いずれも当時)=2012年1月、東京都あきる野市

憲法に背いた政府を「覆滅」する権利も

 折あたかも安倍晋三政権が憲…

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