皇居で今年も歌会始が行われ、天皇、皇后両陛下や皇族方の歌とともに、一般から応募があった約1万6千首から選ばれた10首も披露された。宮中の歌会始に一般国民が歌を寄せることができるようになったのは明治時代。明治天皇とその皇后、昭憲皇太后は和歌を愛したことでも知られており、その和歌は米国人研究者により英訳され、親しまれている。

 明治天皇は生涯で10万首、昭憲皇太后は3万首を詠んだと言われる。明治天皇と昭憲皇太后が詠んだ和歌を英訳したのは米国人の日本文学研究者ハロルド・ライトさん(2024年に死去)=米アンティオーク大名誉教授。それぞれ「敷島の道に架ける橋」「明治を綴(つづ)る麗しの歌」(共に中央公論新社)として出版された。英訳を助けたライトさんの妻で詩人のジョナサ・ライトさんは朝日新聞の取材に「いずれの和歌も日本文化に対する理解を深めてくれる非常に有益なものだと感じた」と語る。

 2冊の本の出版を進めた明治神宮国際神道文化研究所長の佐藤正宏さんによると、出版のきっかけは2017年に、ライトさんから明治天皇と昭憲皇太后の和歌の英訳が明治神宮に届いたことだった。ライトさんは、日本文学研究の第一人者、故・ドナルド・キーン米コロンビア大名誉教授に師事しており、慶応大に留学中の1964年、明治神宮から明治天皇と昭憲皇太后の和歌の翻訳を依頼されていた。当初は出版などの具体的な計画はなかったが、明治天皇の没後110年の機会を目指して出版する企画が立ち上がった。

 ただ、和歌の英訳には、詠ま…

共有
Exit mobile version