東京・日比谷の帝国劇場(帝劇)が建て替えのため2月末をもって休館した。1911(明治44)年に日本初の本格的西洋式劇場として開館。百年以上にわたり、日本の演劇の姿や観劇文化に大きな影響を与えてきた。その歩みと、次代への展望とは。
外国の賓客に日本の文化を紹介できる、舞台芸術発展の本拠地が必要――。明治期の「欧化」と「改良」を求める熱の中で劇場設立の機運が高まり、民間ながら「帝国」の名を冠した1700席の劇場が生まれた。
観劇システムを近代化
中心となったのは、渋沢栄一ら政財界の重鎮。演劇興行については「素人」の鉄道会社や百貨店出身の実業家たちが初期の経営を担った。本業の経験を生かし、観劇システムを近代化。例えば、全てイス席にして番号を振り、誰でも好きな席の切符を劇場から買えるようにした。客席での飲食は禁止し、休憩時間を明示した。
上演作品も目新しかった。歌…