1947年のボストン・マラソンを舞台に、「祖国」への思いを胸に選手や指導者として大会に挑んだ朝鮮半島出身者の姿を実話に基づいて描いた韓国映画「ボストン1947」が30日、全国ロードショーで公開される。監督は「シュリ」「ブラザーフッド」などのヒット作で知られるカン・ジェギュ氏。カン監督は朝日新聞の取材に応じ「歴史の記憶が薄れていくなか、韓日の若い世代に見ていただきたい」と語った。
- 【一問一答で詳しく】映画「ボストン1947」に込めた思いは カン・ジェギュ監督に聞く
映画の主人公は、ソン・ギジョン(孫基禎)。36年のベルリン五輪マラソン競技で、日本代表として金メダルに輝きながら、表彰式で日の丸を隠したと批判され、一線から退いた名ランナーだ。47年のボストン・マラソンに出場した後輩が、ソンの気持ちを受け継いで走る。
ボストン・マラソンと韓国と言えば、同国選手が1~3位を独占した50年大会が有名だ。カン監督はあえて、47年大会を舞台に選んだ理由について、韓国が48年に建国する前の「難民国」だった時代だからだと説明する。「この作品に悪役は出てこない。時代こそが悪役なのだ」という。
ボストン・マラソンに出場するソ・ユンボク(イム・シワン)やソたちを指導するソン・ギジョン(ハ・ジョンウ)らは、韓国が難民国であることを理由に、米国入国の条件として保証金の支払いを求められる。入国後は一時、星条旗をつけて走るように指示される。
選手時代に苦い経験を背負ったソンたちの励ましで、若いソはランナーとしても人間としても成長していく。カン監督は「韓国も日本も1947年がどのような時代だったのか、知っている人は少ない。映画を見て歴史を共有してほしい」と語る。(牧野愛博)