篠田正浩さん=2020年、外山俊樹撮影

 芸術映画から娯楽大作まで多彩な作品を手がけた映画監督の篠田正浩(しのだ・まさひろ)さんが25日、肺炎で死去した。94歳だった。葬儀は近親者で営んだ。妻は俳優の岩下志麻さん。

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 1931年、岐阜県生まれ。早稲田大で箱根駅伝に出場。卒業後の53年に松竹入社。60年に「恋の片道切符」で監督デビューした。若き寺山修司を脚本に起用した「乾いた湖」など、従来の松竹の路線とは異なる前衛的な表現に挑み、大島渚、吉田喜重の両監督らとともに「松竹ヌーベルバーグ」と呼ばれた。

 67年に岩下さんと結婚。独立プロ「表現社」を設立し、近松門左衛門の人形浄瑠璃「心中天網島」を実験的な様式美で映画化し、高い評価を得た。86年には近松原作の「鑓(やり)の権三(ごんざ)」でベルリン国際映画祭の銀熊賞を受賞した。

 公式記録映画「札幌オリンピック」の総監督を務めたほか、坂東玉三郎を主演に迎えた「夜叉ケ池」や夏目雅子が主演した「瀬戸内少年野球団」、日独合作の「舞姫」など、極めて多彩な映画をコンスタントに発表した。2003年の「スパイ・ゾルゲ」を最後に監督引退を発表した。著作も多く、10年に「河原者ノススメ」で泉鏡花文学賞を受賞している。

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