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大阪・関西万博の「大屋根リング」のエスカレーターの利用者=2025年5月17日午後7時25分、大阪市此花区、武井風花撮影
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夢洲から

 大阪・関西万博の会場のシンボルになっている「大屋根リング」には、エスカレーターで上がることができる。

 みんな2列で、立ち止まって乗っている。

 日本ではエスカレーターに乗る時、「歩いて上る人がいるから」と片側を空けるのが慣習になってきた。

 関東では右を空け、関西では左を空ける。関東暮らしが長い私もその慣習が体にしみこみ、関西で思わず左に乗って、後ろの人の「圧」を感じることがしばしばある。

 エスカレーターの歴史に詳しい江戸川大名誉教授の斗鬼正一さん(文化人類学)によると、この慣習は高度経済成長期の大阪で始まった。「効率重視の価値観が反映された」という。

 ただ今は、片側が空いていることで逆に「輸送効率」が下がり、歩いて上るのは事故にもつながることから、各地の駅などで「歩かず2列」が呼びかけられている。斗鬼さんは「ゆとりを重視する社会に変わってきた」とみる。

 万博の会場内では2列が定着しているが、最寄りの夢洲駅では2列だったり1列だったり。染みついた慣習も時代とともに変わっていくものだと思うが、まさに今、「2列が当たり前の社会」へと歩む変化の時を目撃しているのかもしれない。エスカレーターでは歩まない方が良いのだが。

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 世界中の人々が集まり、連日多彩なイベントが開かれる大阪・関西万博。会場の夢洲(ゆめしま)で取材に駆け回る記者たちが、日々のできごとや感じた悲喜こもごもを伝えます。

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