山田参助さん「坂上暁仁さんは屋内の闇を表現する人なんだなと分かったし、ウルバノヴィチ香苗さんは風が通る解放感を描く作家さんで、高浜寛さんは情報量が多くていろんなことをまとめあげる人だと思いました!」
これはリイド社のウェブサイト「トーチ」創刊10周年記念イベント「点燈祭」トークの締めの言葉。10月27日に東京・高円寺のライブハウスで開催されました。終盤の脱線トークからきれいに(強引に)まとめたのは司会を務めたマンガ家・山田参助さんで、敗戦直後の闇市を舞台とした「あれよ星屑」(KADOKAWA)で第23回手塚治虫文化賞(朝日新聞社主催)新生賞を受賞しています。
登壇者の高浜寛さんは、西南戦争で両親を亡くした少女が長崎の道具屋の売り子となる「ニュクスの角灯」(リイド社)で第24回手塚治虫文化賞マンガ大賞(2020年5月4日の本欄「悪い時代の後にはいい時代が来るから」参照)。坂上暁仁さんは、江戸の様々な職人の技と心意気を緻密(ちみつ)な絵で見せる「神田ごくら町職人ばなし」(リイド社)で第28回手塚治虫文化賞新生賞を受賞しましたが、最終選考で大変な競り合いを演じたのがウルバノヴィチ香苗さんの「まめで四角でやわらかで」(リイド社)。江戸庶民の暮らしを季節感いっぱいに描いています(23年10月9日の本欄「江戸の風薫る『まめで四角で』『ごくら町』で」参照)。
- 悪い時代の後にはいい時代が来るから
- 江戸の風薫る「まめで四角で」「ごくら町」で
同賞を担当する私にとって聞き逃せないトークなので取材してきました。まず、時代物を描くきっかけから。
坂上「元々落語が好きで、美大の卒業制作で描いたマンガも落語が題材でした。東京にいて時代物を描くなら江戸がいいのかなと思い『神田ごくら町職人ばなし』を始めました。同世代で江戸を描いているという人もあまりいないし。元々は少年マンガ志望だったんですけど」
山田「どこでデビューしたかったの?」
坂上「ジャンプです」
高浜「そんなこと言うと、きっと今日ジャンプの編集者も来てるよー」
ウルバノヴィチ「私は一緒に…