夏に咲く②高蔵寺(愛知) 芹沢大地投手
勉強し、好きな野球を楽しみ、普通の高校生活を送る。そんな思いで入学してから2年あまり。取り巻く環境は大きく変わった。高校野球では無名といっていい高蔵寺(愛知)の芹沢大地(3年)は今、大学や社会人、そしてプロのスカウトも注目する速球派左腕に育った。
ゆっくりと右足を上げ、テイクバックとともに思い切り右腕を上方に伸ばす。後方への利き腕のしなりが、肩関節の柔らかさを示している。浮き上がるような強い球が、捕手のミットを高く鳴らす。これまでの最も速い球速は、3月中旬の練習試合で出した150キロだ。
入学当時は130キロ前後。それでも遅くはない。が、自分と捕手を結ぶ直線より、やや一塁寄りに右足を踏み出す、いわゆる「インステップ」の投げ方が体に負担をかけていた。「監督やコーチから投げ方を教えてもらい、フォームを変えたことで球速が上がった」と言う。
ステップを一直線に直し、股関節の可動域を意識して投げるようにすると、数字が上がり始めた。2年の春には140キロに到達。その年の夏には145キロを超えた。そして、150キロ――。階段を一足飛びに駆け上がる成長ぶりだ。
捕手に向かい、プレートの左端に軸足を置く。右打者の内角をえぐり、左打者から最も遠い外角球を投げるためには効果的。一方、左打者への内角を突くのには勇気がいる立ち位置だ。「投げづらいけど、変えるつもりはない。死球を恐れずに、投げきりたい」
4月、全国から有力選手が集ったU―18日本代表候補の強化合宿に、公立校の選手として唯一、参加した。「レベルが高かった。キャッチボールのやり方ひとつでも、学ぶことが多かった。投球の合間の、間の取り方も」と楽しそうに振り返る。昨夏の全国選手権を制した京都国際の左腕、西村一毅(いっき)(3年)らと、変化球の握り方や打者への攻め方など、情報交換をしたという。
プロ野球、いずれはメジャーリーグの世界へと思いをはせる。が、高校最後の夏の目標は、同校初の甲子園出場。「(愛知の)強豪私学に勝ちたい」と燃えている。