連載「100年をたどる旅~未来のための近現代史」憲法編

100年をたどる旅 憲法編

 両大戦の戦間期に結ばれた不戦条約は日本国憲法につながる内容を持つ。「憲法9条の思想水脈」を著した歴史学・政治学者の山室信一さんは、この条約の現代に通じる意義を「三つのふせん」を補助線に説き明かす。

 ――戦間期の1928年に調印された不戦条約が、憲法9条の思想水脈につながっていると著書で指摘しています。9条には国際的な普遍性があるのですね。

 「確かにそうですが、一方で敗戦直後の日本では連合国軍総司令部(GHQ)の草案が出る前に、憲法問題調査委員会(松本委員会)で平和国家、非武装国家を作るべきだとの議論が出ていました。こういう議論が日本人の中でもなされていた事実は押さえておくべきです」

 「戦前にもジャーナリストの塩津誠作のように軍備全廃を唱えた人物はいました。塩津はそのための憲法改正を各国に訴えるべきだと書いています」

 ――不戦条約には現代から見るとどういう意義があるのでしょうか。

 「三つの『ふせん』で考えています。不戦条約の『不戦』、100年前に実現した普通選挙法の『普選』、そして終戦直後の80年前、GHQの指令でやっと実現した婦人選挙権の『婦選』です」

 「第1次世界大戦後に国際連盟が結成され、戦争をしない義務が規約に定められます。しかし、なかなか徹底しない。そこで結ばれたのが不戦条約です。注目すべきは、条文に『人民の名において厳粛に宣言す』とあることです。これはアメリカでの国民運動の成果なのです」

 「これまでは国家間の外交と…

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