高校野球の春季近畿地区大会が24日、奈良県橿原市のさとやくスタジアムで開幕し、1回戦2試合があった。智弁和歌山は8安打で7点を挙げ、天理(奈良1位)に7―3で快勝した。滋賀学園は五回に勝ち越し、終盤にも加点して奈良(奈良3位)を8―2で下した。
25日は1回戦の残り2試合があり、奈良大付(奈良2位)―京都共栄、東洋大姫路(兵庫)―大阪桐蔭が対戦。4強が出そろう。
【天理―智弁和歌山】
◎…智弁和歌山の勝負強さが光った。三回に荒井の2点適時二塁打で先制し、五回にも一挙5点。序盤から中盤に得点を重ねて、主導権を握った。天理は六回以降に3点を奪ったが、五回までの好機を逸したのが痛かった。
エースが立つ
「今日の試合は、甲子園の初戦だと思って臨むように」。智弁和歌山の中谷元監督は、春の選抜大会の出場校との試合を前に、選手たちに発破をかけた。
打撃では、5番打者の荒井優聖選手(2年)が仕事を果たした。
0―0の三回、2死一、二塁から右中間へ先制となる2点適時二塁打。「初回の打席で凡退していたので、何とか打とうと気持ちが入っていた」と言う。五回の好機にも右越えの二塁打を放って2点を追加し、計4打点を挙げた。
マウンドには、エースの渡辺颯人投手(3年)が上がった。選抜大会の決勝以来となる公式戦での登板。六回を投げて1失点の好投だったが、「きょうは70点。この先も一つ一つ勝ち抜いていきたい」と、気持ちを引き締めていた。
見せた勝負強さ
7点を追う六回、1死一、三塁の好機。天理の5番打者、石黒輝慶選手(3年)は指1本分、バットを短く持って打席に入った。
前の打席では、直球に振り遅れて空振り三振を喫した。次は捉えられるようにと考えた微調整だ。2球目の外角への直球を右前に運び、初得点を呼び込んだ。
続く八回の打席も1死一、三塁。今度は左翼線への2塁打を放って2人を返し、この日のチームの全打点を挙げた。
「勝負弱さ」を課題にしてきた。県予選の決勝では得点機の3度の打席ですべて凡退。藤原忠理監督から打席の立ち位置やタイミングの取り方の「引き出し」を増やすよう求められて工夫し、その成果が出た形だ。
ただ、チームは敗れた。「次は勝利に結びつく場面で打つ」と誓った。
【奈良―滋賀学園】
◎…滋賀学園は粘り強い守りで勝利を引き寄せた。先発の長崎は八回途中までを投げ、8安打を浴びながらも、要所で変化球を低めに集めて2失点にとどめた。野手陣も無失策でもり立てた。奈良は6失策と、守りが乱れた。
狙い球絞り
奈良の岡田宙大(そらた)選手(3年)は、この春から任されている4番打者としての意地を見せた。
相手の滋賀学園のエースは、プロからも注目されている投手。見たことのない球筋のスライダーで、最初は対応できなかった。
しかし、六回1死二塁の打席では、相手のバッテリーが多用していることを逆手にとった。狙い球をそのスライダーに絞り、右中間へはじき返す適時二塁打を放った。
県予選の3位決定戦では、九回に逆転本塁打を打って、チームを昨秋に続く近畿大会へと導いた。それでも、県予選と合わせて2度も負けたことが「悔しい」と言う。
夏は負けたら終わりだ。「勝てるチームをめざして、チーム全体で意識を高くしないと」