(12日、春季近畿地区高校野球和歌山県予選2回戦 智弁和歌山6―0箕島)
3月の選抜大会で準優勝した智弁和歌山が、大会後初の公式戦で勝利した。
エース右腕の渡辺颯人(3年)は試合前、「担当なので」と放送室へ。着ているユニホームに背番号は付いていない。今大会、ベンチメンバーから外れている。
- 強い智弁和歌山を取り戻す 予備教室で結束深めた「ファミリー」
けがや体調不良の問題ではない。中谷仁監督は「チームとして進化を求めるときに、渡辺1本では、というところがある」。
渡辺は選抜大会で5試合すべてに先発し、計31回余りを投げた。疲労や準決勝で右足に打球を受けた影響で、決勝は万全の状態ではなかった。
中谷監督は「もう少し渡辺のイニングを減らせていれば」と悔やむ。後ろを任せられる投手が複数人いて、早めの継投で勝ち上がった横浜とは対照的だった。
渡辺に次いで軸になる投手の台頭は「絶対的に必要なポイント」(中谷監督)。春季大会はあえて渡辺を外し、投手陣に成長を促す道を選んだ。
この日の先発は宮口龍斗(3年)。選抜大会では渡辺と勝ちパターンを形成し、抑えを担った右腕だ。6回無失点、毎回の8奪三振と好投した。
四死球なしで、二塁すら踏ませない快投。「どれだけ速くても、ストライクに入らなかったら意味がない。意識して試合をつくれた」
選抜大会では4試合に救援したが、防御率は4点台。2回戦のエナジックスポーツ(沖縄)戦では球速151キロを計測も、四球をきっかけに失点する試合が目立った。「全試合、本当に結果が出なかった」
大会後は、自ら中谷監督にアドバイスを求めた。上半身をねじっていたフォームを修正し、制球とスピードの両立をめざしている。
さっそく成果を感じさせる内容に、中谷監督は「『速い球を放りたい』から、『チームを勝たせる投球をしたい』にちょっと変わったなと思う。すごく安心して見られた」。
今大会、背番号1をつける宮口は「本当の『1』ではないのは自覚している。夏はしっかりとれるようにしたい」。
半月前の悔しさを、成長の糧にする。