(30日、第97回選抜高校野球大会決勝 横浜11―4智弁和歌山)
試合を終えた智弁和歌山のエース渡辺颯人に、話しかけてきた選手がいた。
「ありがとう。またやろう」
声の主は横浜の為永皓。渡辺も同じように返した。
渡辺は神奈川県出身で、為永とは中学時代の友人だ。チームは違ったが家が近かったことから意気投合し、何度も遊ぶように。野球談議に花を咲かせ、バッティングセンターに行った。一緒にディズニーランドで遊んだこともあった。
そんな友人と、甲子園の決勝という晴れ舞台で対戦することになった。胸が高鳴った。
でも対戦して感じたのは、「投げていて嫌な選手」ということだった。バットコントロールがうまく、内角も外角もうまく対応してきた。
六回には2死満塁の場面で為永を迎えた。2球目、甘く入った変化球を右前に運ばれ、2点適時打にされた。直後、降板を告げられた。9失点。肩を落とす渡辺と、塁上で喜ぶ為永。勝負は非情だった。
投手と打者として、友人と4打席向き合ったこの日。「夢がかなったけど、自分が抑えて勝ちたかったと本当に思った」。渡辺は振り返る。
「また夏にもう1回やって、リベンジしたい」
- 強力打線の激突、速球の精度の差が明暗分ける 横浜が智弁和歌山下す