全国で老人クラブの活動が岐路に立たされている。会員数が減り、運営を担う役員のなり手が不足しているという。
- 高齢者増加も老人クラブの会員数は減少 専門家が指摘する存在意義
神戸市垂水区の「乙木フレンズ倶楽部」は、マージャンや輪投げなどのサークルごとに毎週、地域の社会福祉センターに集まる。
会員の半数以上は「おひとりさま」だ。20年ほど前に夫を亡くし、隣の明石市から引っ越してきた宮内光子さん(77)は、65歳過ぎまでフルタイムの事務職で働いていたため、近所づきあいがなかった。
退職後、地域でボランティア活動をしたときに知り合った仲間に誘われ、約12年前に入会した。「ずっと家におってもしゃーない。老人クラブの活動は毎日の生活のなかの楽しみ」と話す。
市老人クラブ連合会によると、現在、市内のクラブ数は310で、会員数は2万456人。60歳以上の人口が1990年の約25万人から現在は約53万人に増えた一方で、同時期の加入率は約20%から約4%まで落ち込んだ。全国でもこの10年(13~23年)で、加入率は15%から8%に減った。
「この年でこんなに忙しいとは」
クラブ運営を担う役員のなり手不足は深刻だ。同市長田区の「二葉喜楽会」会長の山田雅秋さんは95歳。前会長から頼まれて引き受けてから、20年以上経つ。
毎年、グラウンドゴルフ大会を企画している。大会前の準備書類や会計資料などは自身がワープロで作成している。「案内通知に当日の配置表、終わったら結果の一覧表。常に書類づくりに追われている。この年でこんなに忙しいと思わなかった」と苦笑する。
そろそろ誰かにお願いしたいが、手をあげてくれる人はいない。「自分がやればみんなが喜んでくれるので。できるうちは続ける」という。
こうした状況は、全市的な課題だ。中央区老連が昨年、区内に25あるクラブを対象にとったアンケートで「現会長の後継者がいない」と答えたのは全体の7割以上に上った。同区老連の役員によると「会長が亡くなったら解散」というクラブもあるという。
危機感を持った市老連は11月から、老人クラブの役員を養成する「KOBEシニア希望塾」を始める。60~70代前半で、市内の老人クラブ会員が対象。月1回のペースで2年間、市職員や民間から講師を招き、イベント運営のスキルやパソコンを使った書類の作り方、クラブをまとめるリーダーシップなどを学んでもらうつもりだ。
神戸市は施設管理の条例制定
一方で、施設の管理にも課題がある。
神戸市は3月、市内の老人クラブが利用する地域福祉センターの管理に関する条例を制定した。
背景には、センターの指定管理者のなり手不足がある。市の担当者は「現状、老人クラブの会員が指定管理者となっているケースが多いが、負担が大きく、管理があいまいな部分があった。地域のNPOなどが指定管理者になれるよう、ルールを定めた」としている。
名称も「地域交流センター」に変更し、来年4月から施行される。幅広い地域団体が使いやすくするねらいがあるが、老人クラブにとっては利用の自由度が減る可能性がある。
利用時間はこれまで午前9時~午後5時だったが、終了時間を午後9時までに延ばした。指定管理者と利用団体の協議のうえ、オンラインサイトで利用予約し、必要に応じてセンターの開け閉めをスマホで操作できる電子錠を導入できるようにもした。
乙木フレンズ倶楽部の鴨川則幸会長(80)は「時代の変化だが、高齢者にとっては利用の手続きが複雑になって不安もある。公民館など他の活動場所も探さないといけない」と話した。