長蛇の列をなす人たちの目を釘付けにしているのは、日本の水族館で2頭だけになったラッコの「メイ」(20歳)と「キラ」(17歳)。国内で唯一ラッコを飼育している鳥羽水族館(三重県鳥羽市)では、ゴールデンウィーク期間中、愛くるしい姿を見ようと全国から来館者が訪れている。
ラッコは水族館の人気者として、ピークの1994年には全国の施設で122頭に上った。しかし、個体数の減少で主な生息地である米国からの輸入が98年に停止され、絶滅危惧種にも指定された。新たな個体の入手が困難になり、繁殖を試みていた国内の水族館からも次々に姿を消していった。
同館では83年からラッコを飼育。最も多いときで6頭育てていたが、現在はともに雌の2頭にまで減った。コロナ禍の臨時休館中、「メイ」が高速スピンを披露する動画がSNSで大きな話題となり、コロナ明けから来館者が急増。今年3月からは、混雑緩和のため水槽最前列からの観覧時間を1分間に制限する運用を始めた。
同館では「2頭ができるだけ長生きできるよう、健康管理に気を配るとともに、その魅力や生態についての情報発信に努めたい」と話す。