文化審議会は21日、明治時代に奈良・法隆寺から皇室に献納された木造伎楽(ぎがく)面・乾漆伎楽面(東京国立博物館)や、太安万侶(おおのやすまろ)銅板墓誌(文化庁)など美術工芸品4件を新たに国宝に指定するよう、文部科学相に答申した。仮面の国宝指定は初めて。
伎楽面(7世紀後半~8世紀前半)は木造が28面、乾漆造が3面で、飛鳥~奈良時代の現存最古の一群。伎楽は中国から朝鮮半島の百済(くだら)を経て伝えられた仮面劇で、平安時代に衰退したが、その後の日本の芸能に影響を与えたともいわれる。銅製の透彫(すかしぼり)など保存状態が良く、仮面文化史上、極めて価値が高いという。
墓誌は短冊状の薄い銅板で、板に刻まれた41字が「古事記」編纂(へんさん)者の太安万侶の居住地や没年月日などを記す。1979年に奈良市東部の茶畑で偶然見つかり、平安初期の歴史書「続日本紀(しょくにほんぎ)」の内容を裏付けた。編纂者の実在を証明し、歴史上欠かせない一級資料と評価された。
美術工芸品42件の重要文化財指定も答申した。ほかの国宝と重文指定は次の通り(かっこ内は所有者や保管場所など)。
【国宝】物語下絵料紙金光明経(こんこうみょうきょう)巻第二(大阪市立美術館)▽和漢朗詠集〈唐紙〉(皇居三の丸尚蔵館)
【重要文化財】絵師草紙(えしのそうし)(同)▽ベルサリエーレの歩哨〈松岡寿(ひさし)筆〉(同)▽南蛮船・唐船入港図(九州国立博物館)▽大津唐崎図〈岸竹堂筆〉(千總ホールディングス)▽僧形八幡神像(神護寺)▽在山(ざいざん)素璿(そせん)像〈明兆筆〉(東福寺)▽花下(かか)群舞図(神戸市立博物館)▽木造護法童子立像(延暦寺)▽木造如意輪観音坐像(ざぞう)(清凉寺)▽木造神像(松尾大社)▽木造地蔵菩薩(ぼさつ)立像〈康俊作〉(圓照寺)▽木造愛染明王坐像(金剛三昧院)▽木造釈迦如来坐像・木造二天王立像(阿蘇釈迦堂管理組合)▽宇治川蛍蒔絵(まきえ)料紙硯箱(すずりばこ)〈飯塚桃葉作/安永四年〉(皇居三の丸尚蔵館)▽七宝四季花鳥図花瓶〈並河靖之作〉(同)▽旭彩山桜図花瓶〈三代清風與平作〉(同)▽小袖裂(ぎれ)打敷(うちしき)〈高台寺伝来〉(高台寺)▽刺繡(ししゅう)聖母子像花鳥文様壁掛(かべかけ)(同)▽論語疏巻(そかん)第六(慶応義塾図書館)▽金光明最勝王経(九州大学付属図書館)▽元版大般若経(西福寺)▽西隆寺跡出土木簡(奈良文化財研究所)▽東寺光明真言講過去帳並(ならびに)現在帳(教王護国寺)▽仁和寺笈(おい)文書(仁和寺)▽琉球家譜・琉球家譜関係文書(沖縄県立博物館・美術館)▽琉球家譜・琉球家譜関係文書(那覇市歴史博物館)▽奈良県飛鳥池遺跡出土品(奈良文化財研究所)▽青森県大平(おおだい)山元遺跡出土品(県立郷土館など)▽群馬県金井遺跡群出土品(県埋蔵文化財調査センターなど)▽深鉢形土器(山梨県立考古博物館)▽静岡県伊場遺跡群出土品(浜松市博物館)▽福岡県西新町遺跡出土品(九州歴史資料館)▽白地鉄絵鳥文壺(つぼ)(熊本県立美術館)▽宮崎県百足(むかで)塚古墳出土埴輪(はにわ)(新富町総合交流センター)▽鹿児島県山ノ口遺跡出土品(県立埋蔵文化財センターなど)▽人物写真帖(ちょう)〈明治十二年明治天皇下命/大蔵省印刷局等製作〉(皇居三の丸尚蔵館)▽霊憲候簿(れいけんこうぼ)(国立公文書館)▽東寺稲荷御出講(おいでこう)枡(ます)〈永正十六年九月吉日/周善等(ら)連署刻銘〉(教王護国寺)▽参宮人帳・御祓賦帳(おはらいくばりちょう)〈橋村肥前大夫(だゆう)家伝来〉(天理大学付属天理図書館)▽伊能忠敬測量図(徳島大学付属図書館)▽伊能忠敬測量図〈実測輿地(よち)図〉(ゼンリンミュージアム)▽宮良殿内(どぅんち)家関係資料(琉球大学付属図書館)