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不来方高校音楽部=2023年、盛岡市

 岩手県立不来方(こずかた)高校音楽部が24日、兵庫県西宮市で「ファイナルコンサート」を開く。高校合唱界で屈指の強豪校は今春、統合で校名が変わる。「不来方サウンド」の最初で最後の関西公演は、阪神・淡路大震災の遺族との交流から実現した。

 不来方高校音楽部は全日本合唱コンクール全国大会に30回出場し、金賞を23回受賞。フランスやイタリアなど海外公演も行い、東日本大震災後は被災地で復興支援コンサートを重ねてきた。

 そんな名の知れた高校だが、今年4月に岩手県立盛岡南高と統合して「南昌みらい」に校名が変わることになったため、「不来方」として最後のコンサートを東京、兵庫、岩手で開くことにした。

 このうち兵庫公演は、阪神・淡路大震災で2児を失った芦屋市の米津勝之さん(65)との出会いがきっかけで実現した。

 米津さん一家が住むアパートは震災で倒壊し、長男の漢之(くにゆき)さん(当時7)、長女の深理(みり)さん(同5)が亡くなった。

 崩れたアパートのがれきの中から見つかった漢之さんのランドセルを、震災後に生まれた弟が背負う――。命をつなぐ物語は「にいちゃんのランドセル」として出版され、同名の合唱曲にもなった。

 その合唱曲と不来方高校音楽部が結びついたのは2017年のこと。米津さんが同校の東京公演を偶然聞き、「ぜひ、にいちゃんのランドセルを歌ってほしい」と手紙を書いたところ、同校が快諾。レパートリーに加わり、大切に歌われてきた。

 米津さんは「初めての兵庫での公演が実現し、歌声はきっと天上の我が子、被災されたたくさんの方々にも届くと信じています」とメッセージを寄せた。

 音楽部顧問の佐藤由梨教諭は「被災した人たちのことを思い、歌うことは私たちの使命。兵庫県のみなさんの心にも届くよう、心を込めて歌いたい」と話す。

 24日午後2時、西宮市六湛寺町のアミティ・ベイコムホール(西宮市民会館)で開演。「Ave Maria」「にいちゃんのランドセル」「となりのトトロ」ほか。兵庫県立神戸高校合唱部と米津さんも友情出演する。

 入場無料だが、整理券が必要。整理券は「teket」(https://teket.jp/12227/43803)などで配布の受け付け中。問い合わせは不来方高校音楽部OGOB会(050・1721・3519)。

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