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中越―関東第一 一回表、力投する関東第一先発の坂本=大山貴世撮影
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(13日、第107回全国高校野球選手権2回戦 関東第一6―1中越)

 エースは最後までクールだった。

 同点の五回1死二、三塁。関東第一の左腕、坂本慎太郎は正念場でカーブを選択した。自信の球種なのはもちろん、打者の構えから「カーブなら引っかける」と読んだ。外角へカーブを4球続け、狙い通り二ゴロに仕留める。

 なお2死二、三塁。今度は次打者の「カーブ狙い」を感じ、直球を4球続けた。5球目のフォークで空振り三振。落ち着いてピンチをしのいだ。

 甲子園の思い出は、後悔であふれている。

 準優勝に終わった昨夏の決勝で「最後の打者」になった。1点を追う十回2死満塁。「初球から振れ」と言われていたのに、体が固まって動けなかった。

 肝心なところで浮足立った自分が、恥ずかしかった。

 エース番号を背負った昨秋以降、「冷静さ」は課題だった。直球にこだわって打たれる場面が目立ち、秋の東京都大会は3回戦敗退。今春も2回戦で敗れた。

 このままではダメだ、とカーブを磨いたことが転機になった。投球の幅が、マウンドでの落ち着きにもつながっていく。

 今夏の東東京大会ではスピードの違う複数のカーブを操って、防御率0・50。甲子園に新しい自分を見せに戻ってきた。

 この日、1失点で完投。「今は周りが見えている」。終盤は守備陣に呼びかけた。「みんなで守るぞ」

 次戦へ、この成長は何にも代えがたい。

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