あれは小学生のころ、父方のおばあさんが危篤だというのでお見舞いに行ったんです。おばあさんは病院ではなく、家の居間に寝ていました。親父(おやじ)はそこにズカズカと入っていくと、おばあさんの顔をのぞきこむなりこう言ったんです。「おーまだ生きとったんか」。すると、おばあさんははっきりとした声で「おーわしゃしぶといでのん」と言いました。「ほうか、ほんならええわ」。親父はそう言ってしばらく枕元に座り、「ほんだら帰るでな」と、やけにあっさりと立ち上がりました。たぶんおばあさんはそれから数週間のうちに亡くなったと記憶しています。

 今年の3月初め。めったに連…

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