現在放送中のNHKの朝ドラ「あんぱん」で出演者らが食べるあんパンなどを作っているのが、千葉県佐倉市のパン職人、竹谷光司さん（77）だ。阿部サダヲさんら俳優にパン作りの指導もした。息子夫妻に経営を任せた同市のベーカリーには、朝ドラ放送開始以降、これまでの倍以上の客が押し寄せており、あんパンは連日売り切れになっている。
竹谷さんは、同市の京成ユーカリが丘駅の駅ビル内にあるベーカリー「Bakery＆Cafe TSUMUGI（つむぎ）」の前身店の経営者。現在の店にはドイツパンやフランスパンなど約70種類の多様なパンなどが並ぶ。「粒あんぱん」（税抜き230円）は、北海道産とカナダ産の上質な小麦を混ぜ、中には北海道産小豆で作った粒あんを詰めている。
朝ドラ「あんぱん」は、「アンパンマン」の作者で漫画家・やなせたかしさんと妻の暢（のぶ）さんをモデルにした物語で、あんパンはドラマの重要なカギとなる。「パン業界は、やなせさんにお世話になってきた。感謝しないといけない」。竹谷さんは語る。
西ドイツに渡って学んだパン作り
北海道室蘭市の豆腐店で生まれ育ち、北海道大水産学部に進学した。「いつかパン店を開きたい」と、大手製パン会社に就職。1年ほどで退職し、西ドイツ（現ドイツ）に渡って3年間パン作りを学んだ。帰国後は大手製粉会社で小麦粉の開発や研究に携わり、62歳で定年を迎えるまで働いた。
2010年、住まいのある佐倉市に念願のベーカリーを開店。20年には、息子夫妻が店を現在の場所に移し、「TSUMUGI」として引き継いだ。
NHKから依頼を受けたのは昨年6月。パン職人の養成などに携わる日本パン技術研究所でパンの歴史を教えていたことから白羽の矢が立った。あんパンのほか、コッペパンなどドラマに登場するパンを作っている。日持ちのするパンのほか、戦前から終戦直後にかけての材料不足の時代の「おいしくなさそうな」パンを再現することも求められ、苦心し、時には不本意ながらも要望に応えた。
出演者への製パン指導も担当。パン職人を演じる阿部さんについては「動きを見事に再現していた」と感心しきりだ。
「もっとおいしいパンができる」
近年は、高齢により閉店を考えているパン職人と、パン店を開きたい若者をマッチングさせる活動もしている。パン業界の衰退を案ずる熱い思いから始めたという。
「日本の小麦を使った日本人の味覚に合うパンをこれからも開発する。もっとおいしいパンができる」と力を込める。
ベーカリーの営業時間は午前8時30分～午後7時。日・月曜は定休。
