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ゼネラルエディター兼東京本社編集局長 春日芳晃

 朝日新聞は、2024年に作った選挙報道に関する社内の指針「選挙取材・報道に関するガイドライン」に基づき、今回「選挙報道の基本方針」を作りました。SNSが選挙結果に大きな影響を与えるようになったことを踏まえ、編集部門のリーダーである編集局長室がまとめました。今夏、東京都議会議員選挙と参院議員選挙が行われるのを機に、読者の皆さまにご説明します。

 私たちはこれまで、選挙期間中の報道は、特定の政党や候補者に偏ることがないように、公平性を重視してきました。

 しかし、24年の衆院東京15区補欠選挙、東京都知事選挙、兵庫県知事選挙で、過去に想定しなかったことが起きました。虚偽、または本当かどうか分からない情報がSNSで拡散されたり、一部の政党や候補者が他の候補の選挙の妨げになる行動をしたりしました。特に兵庫県知事選の報道をめぐっては、多くの読者から「有権者に必要な情報が届いていない」というご批判を受けました。

 時代の変化と読者の声を受けて、従来の選挙報道を振り返り、あるべき姿について議論しました。

 まず、公職選挙法や日本新聞協会編集委員会の統一見解、朝日新聞の報道指針から、「選挙期間中も選挙報道は基本的に自由」という原則を再確認しました。

 そして、選挙報道の公平性に一定の配慮をしつつ、政党や候補者が誤った情報を発信したり、社会通念に反する問題行動をしたりした場合は、取材を尽くし、積極的に報じる方針を、社内であらためて共有しました。

 また、本当かどうか分からない政治家の発言やSNS上の情報については「ファクトチェック」の手法で真偽を明らかにします。この取り組みを強化するため、ファクトチェックに取り組む編集部も発足させます。

 こうした取材・報道を続ける中で、記者が誹謗(ひぼう)や中傷を受けた場合は、法的措置を含め、社として記者を守ることも確認しました。

 選挙報道の使命は、読者の皆さまの判断に役立つ、正確な情報、記者が見極めた事実、多角的で深い分析をお届けすることです。今後も不断に見直しながら、積極的に報じていきます。

選挙報道の基本方針

●公職選挙法、日本新聞協会の統一見解、朝日新聞の従来の指針に照らしても、選挙期間中の選挙報道は基本的に自由です。このことを再確認し、有権者の判断の参考になり、役立つ情報を積極的に報じます。

●選挙期間中の候補者、政党などの発言、行動が、結果的に政党や候補者に不利になる可能性がある内容であっても、有権者の判断に役立つと判断した場合は、事実に基づいて積極的に報じます。ただ、事実であっても個人のプライバシーに関する事柄については、一般の記事と同様に慎重に判断します。

●SNS上で誤っていたり、真偽がわからなかったりする情報が広く拡散され、有権者の投票行動に影響を与える可能性があると判断した場合、誤っているかどうか、また根拠がないかどうかなどを裏付け取材したうえで報じます。

●取材や報道の過程で、記者が誹謗(ひぼう)や中傷を受けた場合、本社は法的措置を含めた相応の対応をし、記者を守ります。

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