朝日歌壇への投稿歌から選ばれる第41回朝日歌壇賞が決まりました。2024年の入選歌から選者4人が1首ずつ選びました。賞状と記念品が受賞者に贈られます。朝日俳壇賞は19日に掲載します。
高野公彦選
受賞より核廃絶を待ち望む被爆者の顔深き皺(しわ)よる
(つくば市)山瀬佳代子
〈作者の言葉〉炊事をしながら思い出した。田中熙巳(てるみ)さんが、核をめぐる状況は今も厳しいと語ったこと。顔には長い年月が刻まれていたこと。核廃絶への願いを受けとめ、詠んだのだった。
〈評〉日本被団協の人々が待ち望むのはノーベル平和賞でなく、核兵器無き世界。
永田和宏選
エサ用のメダカは一ぴき十五円食べられる日を知らずに泳ぐ
(奈良市)山添 聡介
〈作者の言葉〉ぼくは生き物をかっていませんが、いつか犬やインコをかうのが夢です。ペットショップでエサ用のメダカが売られていてびっくりしました。エサになるって決めないで。
〈評〉エサ用のメダカがいるなんてと驚く。それはそのまま命の大切さへの気づき。
馬場あき子選
帰国して笑顔弾ける選手団こんな世代を戦地に送りし
(塩尻市)原 田鶴子
〈作者の言葉〉まぶしいばかりのパリ五輪選手団の帰国が、丁度(ちょうど)、終戦の日前後だった事(こと)もあり、目の前にして、戦地に送られたのはこういう人達(ひとたち)だったんだと、改めて衝(つ)きつけられました。
〈評〉オリンピックを終えて帰国の選手たち。思えばこの世代を戦場に送ったのだ。
佐佐木幸綱選
流鏑馬(やぶさめ)の一瞬の間に駆け抜けて尻尾ばかりがスマホに残る
(宝塚市)寺本 節子
〈作者の言葉〉ニュースでは見ますが実際に見たのは初めてです。見物席が最前列だったので張り切って撮ったのですが失敗作ばかり。蹄(ひづめ)の音高く近づくや猛スピードで走り去りました。
〈評〉スピード感とユーモアで、はなやかな流鏑馬の行事を表現して見事です。