10月13日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さん、馬場あき子さんです。☆は共選作です。
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佐佐木幸綱選
「食欲があって困るわ」と妻腹をポンポン叩(たた)く秋晴れの朝(神奈川県)高橋 静一
雨男であること隠しパーティーのどんじり歩く雨の北岳(神戸市)松本 淳一
入院の妻に替わりて我が家(いえ)の百年糠床(ぬかどこ)初めて捏(こ)ねたり(東京都)茶木登茂一
総裁選十指に近き候補者に拉致問題を言ふ者は無し(加東市)藤原 明
笑わねば立てぬであろう被災者になぜ笑えるかと問うテレビ記者(東京都)堀江 昌代
早朝から栗ごはん作る妻がいて今日は息子が帰って来る日(魚沼市)磯部 剛
シャインマスカット並ぶ隣に刀根柿の小さなパック初物うれし(越谷市)畠山 水月
エンジンの音に茎切る硬き音まじりて重き除草車通る(鴻巣市)松橋 雅実
真夏日に細き秋刀魚と新米で秋を味わう冷房の部屋(新潟市)杵渕 道子
☆深夜目覚め鈴虫馬追い聞き分けていよよ目が冴えつくづく独(ひと)り(碧南市)島谷 春枝
【評】第一首、食欲の秋到来。思い切って明るい「妻腹をポンポン叩く秋晴れの朝」が秀逸。第二首、独特のユーモアが楽しい登山の歌。第三首、「百年糠床」には驚かされる。入院するまでは何十年も、「妻」が捏ねてきたのだ。
高野公彦選
朱鷺(とき)がいて世界遺産…