10月20日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は高野公彦さん、永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さんです。☆は共選作です。
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高野公彦選
三つめの惑星水は満ちたれど戦を止める術(すべ)を知らない(東京都)椿 泰文
大丈夫まだ見えているオリオンで視力検査す秋の夜明け前(五所川原市)古川 早苗
☆見ましたか未(ま)だ見てないね見ましたよ 床屋談議に飛び交う雪虫(札幌市)田巻 成男
郵便局配達員の募集ビラ〈季節を感じるお仕事ですよ〉(浜松市)小林 則子
ガザの子はたぶん大谷翔平を知らない野球さえ出来なくて(近江八幡市)寺下 吉則
寡婦となりて田の一枚も減らさずに来て九十の今も草取る(水戸市)檜山佳与子
羽田まで出迎えの友をハグせんと近づき逃げられ握手にかえる(アメリカ)大竹 博
結婚し名字が変わると勝ち誇るように知らせる女の花園(福井市)佐々木祐香子
北海道を時刻表から切り離しホッチキスする旅の前夜に(魚沼市)磯部 剛
鉄面皮と呼べばよいのか故郷(ふるさと)の知事他人事(ひとごと)のような無表情(船橋市)佐々木美彌子
【評】1首目、太陽系の第三惑星・地球は、水は豊富だが戦争が好きで、やめる術を知らない、と嘆く。2首目、オリオン座で視力検査とは、爽やか。3首目、もう冬か、と雪虫を話題に楽しい床屋談議。10首目、作者の故郷は兵庫県。
永田和宏選
☆「将来はヒズボラになる」と…