10月27日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さんです。☆は共選作です。
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永田和宏選
「人新世」名付けるときは人類が滅んだあとでいいではないか(岡崎市)兼松 正直
「ねじ式」をタブレットにて読みながら遠くにほへるむかしのインク(神戸市)松本 淳一
枚数に限りがあるから丁寧に撮りき昭和のフイルムカメラ(観音寺市)篠原 俊則
人はみな生まれたときはゼロ歳で去り行くときはそれぞれの歳(上越市)藤田 健男
話し相手が遺影だなんて悲しいと言えば居ないよりましと言う姉(下野市)若島 安子
夢に自転車出てきて夜ばかりの日々を旅してゐたデ・キリコの街(京都市)森谷 弘志
自販機の缶コーヒーがサイフォンの珈琲となり定年後の朝(富山市)原 徹
窓枠に両足を乗せて延々と歯磨きをする今ケンカ中(佐渡市)藍原 秋子
今日もまた話しかけられた昼休み「なんで逃げるの?」君が好きだから(東京都)有馬 周人
野田さんがどぢやうだつたら石破さんなまづのやうなり同年対決(川崎市)宇藤 順子
【評】兼松さん、人類の活動が地質や生態系に大きな影響を残した時代を新しく「人新世」と呼ぶが、もっと後でいいではないかと。松本さん、「ねじ式」はつげ義春の漫画。篠原さんの歌と同様昭和を懐かしむ。九首目は中学生。十首目は成程(なるほど)。
馬場あき子選
朝一番友と大和へ行きし妻 …