10月6日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さんです。☆は共選作です。
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馬場あき子選
ラッパーの踊る言葉は七五調世界のリズムに日本の口調(枚方市)細美 哲雄
☆太陽光発電所へと派遣され山羊(やぎ)はいちにち草食(は)む仕事(新潟市)太田千鶴子
夏祭り吹奏楽のお母さん子をおんぶしてマリンバを打つ(市原市)笠原 英子
☆電車内化粧している男性の眉描く技は私より上(川越市)小高 常代
一日に三万人に見つめられそれでも微笑むモナリザあわれ(名古屋市)山守 美紀
黒い雨と黒い灰とを区別して被爆者を差別する判決よ(観音寺市)篠原 俊則
青鷺は紋章のごと羽根広げ送水管の上に立ちたり(茨木市)瀬川 幸子
長旅を励まし合うか初秋(はつあき)の土手にやすらぐムクドリ百羽(仙台市)沼沢 修
刈り取りの最後の稲穂の茂みから雉の子野ねずみ追われ出で来る(山口市)藤井 盛
☆赤土のテニスコートに幾重にも車椅子の描く軌跡美し(五所川原市)戸沢大二郎
【評】第一首はラップ音楽で早口に話すように歌う歌い手のリズムに七五調風のものがあるという。とても興味深い。第二首の山羊はちょっと物々しい所へ派遣。だが仕事は美味な青草の除去だった。第三首のお母さんはすばらしい。
佐佐木幸綱選
百歳というはいかなる生き様…