12月15日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は高野公彦さん、永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さんです。☆は共選作です。
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高野公彦選
ジタンとかタイパと言ってせわしなく時間に追われる令和の日々かな(横浜市)西前 敦子
赤紙を配りてゐしといふ祖父の言葉を想ひ出す開戦忌(村上市)鈴木 正芳
美しきウサギ群れ居る島で観た毒ガスの痕を胸に刻みぬ(広島市)武石 亮二
☆鎌倉の大仏さまの背中には翼の位置に窓ふたつあり(奈良市)山添 聖子
宰相にしたい人だった客死して五年を経たる中村哲氏(亀岡市)俣野 右内
駅前の書店主(あるじ)は新聞の書評、広告みな頭の中(相模原市)石井 裕乃
人生の締め括りとなる火葬さえ順番待ちの団塊世代(札幌市)田巻 成男
大半は他人のために作るもの夫の干し柿われの干し芋(安中市)岡本千恵子
ヒトの乳房ふたつあるのは救いなりき双子が一緒に乳欲せし時(千曲市)中村 美樹
スーパーで売ってた大きなホッキ貝ステゴサウルスのとげとげみたい(奈良市)山添 聡介
【評】1首目、便利さを追求すると、かえって生活が気忙(きぜわ)しくなる。2首目、当時の祖父の複雑な胸中を思い浮かべる作者。3首目、広島県竹原市の沖にある大久野島はウサギの棲(す)む平和な島だが、戦時中に毒ガス兵器を製造した痕跡が残っている。
永田和宏選
作詞者の名前知らずもこの歌…