2月16日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は高野公彦さん、永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さんです。☆は共選作です。
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高野公彦選
露の世に百歳までも永らへて愉しかりけり露の世さよなら(我孫子市)松村 幸一
停戦中瓦礫(がれき)と化した家に戻り遺体を探すガザの人々(つくば市)山瀬佳代子
和人らがアイヌモシリに踏み込みし過去を思へりガザ・ウクライナ(さいたま市)大浦 健
☆猛吹雪やまない町のスーパーで知らない人と心配し合う(富山市)松田 わこ
満票に一票足りずその記者と飲みたいと言うイチローの笑み(東京都)椿 泰文
四世代八十八から一歳まで「むすんでひらいて」を歌う新年会(東京都)上田 結香
作り手の気立て映すや優しげな埴輪(はにわ)の武人のがらんどうの目(下呂市)河尻 伸子
いいぞ宇良、君の味方は徳俵(とくだわら)全力相撲をファンは知ってる(甲州市)麻生 孝
スーパーの書肆(しょし)の撤退 無くなって初めて分かる大切なもの(観音寺市)篠原 俊則
母の歩く速さに合わせゆっくりと歩けば枯草うつくしく見ゆ(仙台市)小室 寿子
【評】1首目、作者は12月30日に亡くなられ、これはご子息(治さん)が代筆して送ってくださった遺詠。爽やかな辞世の歌である。2首目、停戦でやっと遺体を探せるという悲劇。3首目、そういえば日本人もかつてアイヌの国に侵入した。
永田和宏選
亡骸(なきがら)はあなたで…