Smiley face
写真・図版
朝日歌壇選者の(左から)永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん=東京都中央区、小林一茂撮影

 2月2日付朝日歌壇の入選歌40首をお届けします。選者は馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、永田和宏さんです。☆は共選作です。

  • 【投稿はこちら】朝日歌壇・俳壇への投稿、ネットからも

馬場あき子選

 春になれば母となる羊百頭が日向ぼこするグリーン牧場(前橋市)荻原 葉月

 冬銀河輝く夜の保育器の中に小さき生命(いのち)の鼓動(戸田市)蜂巣 幸彦

 繰り上げで汗の襷(たすき)受け取れず乾いた襷は涙で濡れる(つくば市)小林 浦波

 異国にて消耗品の如くにも戦地に骸(むくろ)晒す兵士ら(松戸市)加賀 昭人

 一日の唯一の人との会話さえなくなるセルフレジでの買い物(武蔵野市)山口 京子

 正月三日公園トイレに近いベンチにてパチンと爪切るホームレス一人(東久留米市)五十嵐博代

 「また値上げですか」とすぐさま訊かれたりカレンダーを差し出す前に(長野市)原田 浩生

☆お雑煮を食べつつ家族で抱負言う大人になっても「小さい子から」(富山市)松田 梨子

 ロシア領迂回(うかい)して飛ぶ欧州便 戦争の余波空にも及び(西東京市)荒木わたる

 ゆっくりでいいですよって看護師さんあああ私も歳をとったよ(岡山市)伊藤 次郎

 【評】第一首は群馬県渋川市にある伊香保グリーン牧場の春待ちの光景。母となる羊が毎年たくさんいるという。その日向(ひなた)ぼこの盛観。思うだに楽しい。第二首は冬銀河が輝く下の産院の保育器の中の小さな命。幸あれと祈りつつ見入るその鼓動。

佐佐木幸綱選

☆スーパーに行かなきゃ生きて…

共有